大判例

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大阪地方裁判所 昭和44年(ワ)2318号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕原告がその所有にかかる本件建物を訴外亡池田音松に賃料一ケ月金二、二〇〇円で期限の定めなく賃貸していたこと、

原告が昭和四三年二月二日付内容証明郵便で、右訴外人に本件建物を自ら使用する必要等正当な事由があるとして賃貸借契約解約の申入れをなし、右意思表示が同月三日池田音松に到達したこと、池田音松は昭和四四年一月五日死亡し、妻である被告池田まつよ、子である被告池田勝正、同池田正雄の三名が相続により池田音松の地位を承継し、現に被告等三名が本件建物を占有していることはいずれも当事者間に争いがない。

そこで原告に本件建物賃貸借契約の解約申入について正当事由があるかどうかについて判断する。<証拠>によると、原告は明治二五年一月生れの老人であり老衰のため屋外には出られず屋内において寝たり起きたりの状態であつて本件建物よりの前記家賃収入以外に収入もなく、本件建物及びその敷地が唯一の資産であること。昭和四〇年八月原告の長男が経営していた歯車製造の事業が倒産したため現在のいわゆる文化アパートに居住するようになつたのであるが、右文化アパートは畳敷の六畳、三畳の間と炊事場及び四畳半の板の間という間取りであり、ここに原告夫婦、長男夫婦とその子供二人、次男の七人が生活していること、

原告の長男は肺結核のため同人の収入はなく、原告の妻の内職による収入一日三〇〇円位と会社員である次男の収入一カ月金四〇、〇〇〇円及び本件建物の家賃収入によつて前記七人の生計を維持している状態であり、他に住居を求めることは不可能であること、本件建物は階上は六畳、4.5畳、階下は六畳、三畳と玄関、台所、板の間という間取りであつて、これに会社員である被告池田勝正夫婦、被告池田まつよ及び被告池田正雄の三人が居住していること(但し被告池田正雄は現在警察学校在学中で現実には本件建物には居住していない。)被告等は現在経済的にも他に住居を求めることは比較的簡単であること。本件建物は表通りに面し人通りも多く商売に適する位置にあり、原告は本件建物の明渡しを受ければ原告の妻又は長男の妻が日用品の販売等をして原告一家の生計維持をはかりたい考えであること、原告一家の生活は経済的条件及び居住条件の劣悪のためこのままの状態で推移すれば破綻をきたすおそれがあることが認められ右認定に反する証拠はない。(以上の事実中本件建物の間取りについては当事者間に争いがない。)

以上認定の原告、被告等双方の事情を考えあわすと原告は本件建物を自ら使用する必要があるものというべく本件建物の賃貸借契約は原告がなした前記解約申入により昭和四三年八月二日限り解約となつたものといわねばならない。(北浦憲二)

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